
小さく建てて豊かに暮らす選択について
家づくりを考え始めたとき、多くの方が「せっかく建てるなら、できるだけ広い家を」と望まれます。広いリビング、たくさんの収納、大きな浴槽やダイニングテーブル。確かに、ハウスメーカーのカタログやSNSに並ぶ住宅の写真は魅力的に映ります。
しかし、私たちは「家の大きさ」と「暮らしの豊かさ」は必ずしも比例しないと考えています。
物価が上昇している、住宅の建築費が高騰し続ける今の時代において、無理をして大きな家を建てることは、本当にご家族の幸せに繋がるのでしょうか。住宅建設は完成して一区切りは迎えますが、終わりではありません。むしろ完成してからの時間の方がずっと長く、そこでどう暮らしていくかが大切です。今回は、私たちが考える「小さく建てて、豊かに暮らす」という視点からお話しします。
1. 大きな家が奪ってしまう「人生の選択肢」
家を大きくするということは、建築時の初期費用(イニシャルコスト)が跳ね上がるだけでなく、その後の数十年間にわたる冷暖房費や、将来の修繕費用(固定資産税や外壁の塗り替えなどのライフサイクルコスト)も同時に増大させることを意味します。
「大きな家」を手に入れるために、毎月の住宅ローンに追われ、休日の家族旅行や、お子様の教育費、ご自身の趣味を楽しむ余裕がなくなってしまっては本末転倒です。
私たちは基本設計段階で、ご家族の「資金計画」について詳細にヒアリングを行います。本当に必要な広さを見極め、過剰な面積という名の贅肉を削ぎ落とすこと。それによって生まれた金銭的・精神的な「ゆとり」こそが、人生をコントロールし、自由に生きるための最大の土台と考えています。
2. 「引き算の設計」が生み出す、空間の広がりと心地よさ
「でも、小さな家だと窮屈に感じるのでは?」と心配されるかもしれません。そこで力を発揮するのが、私たち建築家の「設計の力」です。
床面積の数字が小さくても、空間を広く豊かに感じさせる工夫はあります。 例えば、廊下という「ただ通るだけの無駄なスペース」を極限までなくし、生活空間に還元すること。そして、むやみに天井を高くするのではなく、あえて重心を低く抑えることで、空間に落ち着き(静謐さ)を生み出すこと。空間に抑揚・リズムを生み出すこと。
さらに、深い軒を出して内と外を曖昧に繋ぎ、窓から入る光や風(パッシブデザイン)を美しく取り込むことで、実際の面積以上の空間の広がりと視線の抜け感を感じさせます。また装飾を抑え、懐かしさを感じる日本の意匠を取り入れて空間を整えると、コンパクトな家は決して窮屈な箱ではなく、隅々まで目が届く日々愛される心地よい居場所へと変わります。
3. 浮いた予算を「時が経つほど美しくなるもの」へ投資する
面積を小さく抑えた最大の恩恵は、予算を「本物の素材」と「確かな性能」に回せることです。
面積が小さければ、それだけ冷暖房の効率が上がり、G2グレード(断熱性能の示す指標です。詳しくは別の記事で書きたいと思います)のような高い断熱性能の恩恵を最大限に受けることができます。また、毎日足が触れる床を無垢材にし、手が届く壁を美しい左官仕上げにするなど、素材の質を大きく引き上げることが可能になります。
広さという「量」を追うのではなく、素材という「質」に投資する。 これらの自然素材は、決して古びて劣化していくのではなく、ご家族の歴史とともに味わいを深めていく「経年美」を備えています。30年後も愛着を持って触れられる本物の素材に囲まれる暮らしは、何にも代えがたい本質的な贅沢です。
まとめ
家は、大きければ大きいほど良いというものではありません。昨今、SNSで拝見する間取りは巨大な間取りも見ます。web上での完璧な間取りマウント、神間取りマウントは 万人に当てはまるとは思えないのです。ご家族の身の丈に合い、人生の選択肢を奪わず、隅々まで手と愛着が行き届く「小さな器」。それこそが、これからの時代を軽やかに、そして豊かに生きるための「すまいの原点」だと私たちは信じています。
あなたとご家族にとっての「本当に必要な豊かさ」とは何か。ぜひ、私たちにお聞かせください。 その想いをじっくりと紐解き、あなただけの「小さくても本当に豊かな住まい」をご提案させていただきます。
今日も最後まで読んで頂きありがとうございました。